きままにほろり

銀色のシールの貼ったゲームのネタバレ感想ほか、徒然なるままに。

ゲーム感想⑲

かけぬけ☆青春スパーキング

サガプラの作品を続けてプレイするのは今回が初めてで、春色→金色と続いて三作目。

 

進行順:栞里→律→響→凪子→理々→橘花(固定)

 

主人公の遊は義父を早くに亡くし実の母親は蒸発して、奨学金によって学園に通いながらバイトで生計を立てつつ義妹と二人暮らしをしている。それ故に主人公は過度なリアリストとなり、勉学とバイト以外は不要として排除して生きていたが、幼馴染みの響が転校生として現れ、「青春」することを押し付けようとしてくる。同級生の理々なども同じ思いらしく、なんとか避ける方法を考える遊であったが、学園長となった母方の叔母の方針により、奨学金制度の廃止と実績のある部活以外の廃部が宣言される。

行動部の響とボランティア部の理々からの願いと、叔母に焚きつけられる形で現状維持のために遊は、実績づくりの為に二人の部に協力する。協力する中で学園生活を楽しむ=青春することの楽しさに気付きはじめる。

叔母の真の目的は遊に資産家である母方の家を継がせることで、学園改革は二の次だったということが明かされ、学園改革と引き換えに家を継ぐよう迫られる。対立は平行線となり遊は叔母に一度も勝ったことのないポーカーで勝負を挑み、勝利を掴むことで青春部として活動することとなる。

 

プロローグでは叔母という存在を響という青春する学生の代表みたいな存在に対する、抑圧する大人として登場して悪役の立ち回りをみせる。先の進行によって真意が見えその片鱗も見えるが、この時点では完全に悪役で好意的には見られない。

以下、ネタバレ上等

 

すべてさらっていて、メインヒロインは 何かからの克服を軸に話が進んでいるのではないかと感じたので、そこを中心にまとめてみる。

 

栞里 対人恐怖症の克服

幼少期はアイドル志望、現在は両親からの援助を受けてVチューバ―という今だからこそな設定。両親とは疎遠で遊との共通点を感じるがあまり関係はない。他人とのコミュニケーションが苦手だからといって、見ず知らずの他人に話しかけてみるというのを実践提案する主人公はちょっとわからない。

Vチューバ―の中の人であるという秘密を二人で共有することが恋愛のきっかけとなる。恋愛が充実することでVチューバ―である自分を見失いかけるが、主人公と共に始めるきっかけ(トラウマ)と向き合うことで、始めたきっかけを思い出し前向きになる。

主人公はヒロインのサポート役であくまで話のメインはヒロイン。

 

律 家族のしがらみの克服

義妹でありながら幼少期から兄に対して恋心を抱く律。バイトと部活の両立を図るが人不足で、律と響が応援に入り共に働くようになり日々を充実させる。

そこで悪役に徹していた叔母がプロローグでの誤解を解くような形で登場。遊と律が不自由なく暮らすためにも、遊が遺産を受け取るべきだとして家を継ぐことを提案したことが明かされる。だが親類に莫大な遺産を受け取る権利のある人間が、兄妹だけで暮らしていることをよく思わず、叔母はその動きを察知して二人で別々に暮らすことを提案する。別々で暮らす可能性を考えた二人は、響の後押しもあり恋仲として暮らし続けることを決心。叔母は二人の意志を尊重して見守る立場となる。

恋仲となった二人は日々を満喫するが、ある日叔母から実母が余命わずかであることを伝えられ、渋々実母との間接的な対面を果たして、自分の思いを伝えて和解する。

 

このルートを見なければ基本的に叔母のイメージはプロローグの姿のままなのでかなり不憫。響も二人のことを大切に思いながら、後押し役に徹して自分の思いを封じこめているところで不憫。不憫な女性を二人生む上に、実母が蒸発した理由から和解のシーンまで、煮え切らないかたちで終わっており、兄妹の恋愛以外はもやっとするところが多々あった。

 

響 幼馴染みの再認識

プロローグでは強引で鬱陶しい幼馴染みという強烈なイメージだが、それも遊を支えていきたいと誓った彼女の一途な心ゆえ。幼少期に主人公とした結婚の約束を覚えていて、海難事故で一度主人公を失いかけたことをきっかけに、主人公の灯りであり続けようと積極的に行動する。

遊はそんな響を鬱陶しいと思う感情と共に、自分が響を守れる存在になりたいという幼い時の思いを改めて認識する。結局は、響からの告白となり二人は恋仲となる。

遊との青春をもっと充実したものにする為にと、響は地域フェスを企画して持ち前の行動力で地域の人たちの協力を得ながら開催へとこぎつける。理事長である叔母による監視が、突き進む響のブレーキとして上手く機能してより良いかたちへとなったように見えるが、誤解をしたままの関係性なので報われてはいない。

響は遊の前では明るく振る舞いながらも心の中で不安な心を抱え、遊は響に良いところを見せようと思いをひた隠しにする二人はすれ違うも、フェスの生徒の告白の場でお互いの本心を叫びあってわだかまりを解く。

 

主人公が鬱陶しい幼馴染みの可愛さを再認識して付き合うという、幼馴染み系の王道×学園のイベントにヒロインと打ち込んで溜め込んだ気持ちをぶつけあう青春の王道というのが、最後まで見られたのも響のふと見せる弱さと、律ルートにおける遊が幸せになるなら全力でサポートするという姿勢を前に見ていたからかもしれない(ヒロインとして報われた姿を見たいという願望)。

 

凪子 夢への弱点の克服

武道系純粋ヒロインな凪子は、遊とサーフィンという趣味の共有を通してどんどん意識するようになり、ここでも響のサポートを受けて主人公と恋仲になる。アマチュア大会への出場をきっかけに雑誌の取材を受けた凪子は、特集の際に技の披露を提案されるが、これまで出来ていた技でさえもできなくなる。スランプに陥った凪子を遊は支え続けるも上手くいかないまま日々は過ぎるも、地元の神社の階段を駆け上がるという荒療治で、凪子のもやもやはスッキリし取材もうまくいく。

凪子は自分の弱点を理解しつつ更なる高みを遊とともに目指していく。

 

理々 生まれの負い目への克服

手品を教えてくれた遊に、自分がどう青春をすればいいかわからないのなら師匠になり手本を見せますと豪語する理々。それはすなわち恋愛ということで、ずっと遊を思っていた理々にとっては大チャンスだった。

お互いに相手には釣り合わないと思っていた二人だったが、ここでも響の後押しによって、理々の決心がかたまり二人は付き合うようになる。

二人で恋愛を楽しむが理々の父親から自分のことに夢中で慈善活動が疎かになっていることを指摘され、裕福な家に生まれた故の負い目から慈善活動をしていてそれを大切していたのに、それを疎かにしていた自分を恥じる理々。二人の馴れ初めを劇にして児童館で披露することで、慈善活動という目的を達成しつつ二人の愛を再確認するのだった。

 

理々が遊を想ってベッドで悶々とする場面などは微笑ましいが、付き合ってからの二人はベタ甘すぎてそら父親から釘を刺されるはず。

 

橘花 青春カウント

橘花が見えるという青春カウントは命の輝きで、『喫茶ステラ』における蝶の逆の指標だったという。水難事故から助かった遊にそれを授けたのが、巫女だった橘花であり自分の輝きを授けた遊をずっと見守っていた生霊だったという。

生霊としての実体を維持できなくなった橘花は消滅するが、叔母の協力によって当時に同名の彼女の存在を知り、輝きを返すということで実体の目覚めを待つ。

『金恋』だと消滅するところで終わっていたかもしれないが、本作では橘花の実体が目覚めてともに旅に出るまでを描く。

 

 

 

どこかで見たような流れ、ベタベタな設定も青春というマジックによって輝いた作品に思えるのだから不思議なものである。FDはたぶん……無いと思いたい。