きままにほろり

銀色のシールの貼ったゲームのネタバレ感想ほか、徒然なるままに。

RIDDLE JOKER

発売日的に年度明けの仕事やその他諸々でなかなかシナリオが進められないのではと、危惧しておりましたが次の展開への関心が勝り睡眠時間を犠牲に過去作ペースで全進行を終えることとなりました。

 

待望の新作ということでキャラソンCDの発売からOP、体験版の公開まであっという間に過ぎた心地すらしました。過去作と比べて自分の姿勢の変化として今回はキャラソン全曲が、天神乱漫以来の神作曲だということでコンプリートしたことでしょうか。キャラソンCDを手に取るとドラマCDも当然聴くことになるのですが、茉優や羽月では本編に繋がりそうな鍵が仕込まれており、本編においてどんな展開を魅せてくれるのかドラマCDだけの時点から楽しみでした。 そこから体験版が公開されその鍵の詳細が明かされることになり、製品版まで焦らされずに済んだ安心感とこれからその関係性を元に更にどう踏み込んでいくのかより楽しみとなりました。体験版で明かすのではなく製品版まで焦らすかどうか好みが分かれるとは思われますが、変に焦らされてシナリオを越えてしまい期待外れになるくらいなら、体験版で明かしておく方が自分は好きです。

※以下ネタバレ感想

 進行:羽月→千咲→七海→茉優→あやせ

シナリオ同士の関わり合い的にはこの順番で引っ掛かりはありませんでした。茉優とあやせが学園の謎に迫る内容となっている以外には、千咲と七海で友人同士という横の関連性があるくらいで他は順番的には特に(羽月だけはぐれものみたいだけど)。

 

羽月 家柄に恥じぬ活躍を夢見るお代官

警察である父親を尊敬し自身もそうなりたいと願うも、能力も水の操作とあまり役立てられず自身を低く評価している時代劇好きの真面目正義漢。ある日、水の能力を使用したと疑わしき事件が市内で頻発し、特別班の主人公は彼女の無実を信じながら羽月をマークすることになる。マークする中で次第に羽月への恋心を抱くようになるものの、自身の仕事柄故に正義漢である彼女には不釣り合いと尻込みをする。彼女は幼少期に助けてくれたのが彼だと知ってから、好意を募らせ告白するも保留され自身の不甲斐なさのせいと気を塞ぐ。互いの誤解を解き晴れて恋人となるも、水難事故は続きその調査途中で羽月に行動が露見して失望される。 しかし最終的には二人で犯人を追い詰め仲も戻る。

二人の思いと行動のすれ違いは進めていてもどかしいものの、羽月の様子の変化というものは見ていて可愛らしいという他になかった。正義一徹だった羽月に生まれる人情が作中でいい効果を出していた。

 

千咲 コミュ力おばけの常識人

全ヒロインの中では唯一の非能力者。偏見の目でではなく能力者と直接関わる学園という環境で判断したいという、コミュ力おばけでいたって真面目な常識人。ある日、能力を利用した痴漢が市内交通で発生し、主人公らと千咲は共に解決に動き出す。任務である故に千咲の関与に不安を覚える主人公であったが、千咲の悪用で能力者全体が悪く見られるのが嫌だという熱い思いに触れて協力していく。そんな捜査の中で二人の仲が深まっていき、自分が学園に入った理由を理解してくれた主人公へ好意を抱く。

面倒見のいいロリっ子で七海進行でも相談にのって活躍している。本人はロリっ子と認識されることを良く思ってないらしく、それが見られる面白い反応も。

 

七海 色々と思いを抱えた義妹

本当の家族のかたちを知らず、養父に引き取られ面倒を見てくれた義兄を慕う。兄といつまでもいる為には家族のかたちでいいと考えていたが、学園で兄が他の女子と交流を持つのを見たり、任務で兄が危険な目に遭ったことから今の形ではない関係を望む。理性で押し殺していた主人公も妹の思いに答える形で成就する。 そんな思いを成就させた二人の裏で規制派による特別班への圧力と、能力者の人身売買の動きがあり兄妹はこれまでの家族が壊れることを苦慮する。ただならぬ雰囲気の二人を周囲が心配しない訳がなく、語れない事情多かれど意を決して助けを求め敵に立ち向かう。

茉優進行では若干の嫉妬を見せる場面あれど他の進行では、主人公の妹で徹しようとしてその思いを見せるような場面はない。その分だけこの進行でより思いが溢れているような印象がある。七海だけではない家族や頼れる人に飢えた、在原兄妹が周囲の温かみに触れて成長する物語とも言えるだろうか。 ところどころでシャーリィの面影があった。

 

茉優 抱えすぎたおねえさん

任務の為に茉優の研究室への侵入を繰り返す主人公。更に学園への不穏な動きを探るために、茉優にトラップを仕掛けて更に学園の抱える内情を探れとの指令が下る。自分の茉優先輩へのただならぬ思いと任務の遂行の間に挟まれている中で、とうとうその行動がバレてしまい、互いにカマの掛け合いになる。ただ既に幼少期の縁もあり互いを離したくない気持ちが勝り、互いの秘密を明かし二人でひとつの目標を目指して共に歩む道を選ぶ。

 任務の為と相手の懐に潜り込む様は目的さえ知らなければいい光景なのに、心苦しささえ感じるようだった。その分互いに素性を打ち明けてからの二人はそんなあからさまでいいのかってくらいのベタ惚れ具合。一番年上だけど一番はっちゃけてるかもしれない。

 

あやせ かわいい二重面相

学園の学生会長にして広報として活躍するスタイル抜群の美人さん…を演じていることが、襲撃事件で主人公に露見して主人公は唯一彼女の素を知る同世代の人間となる。ある程度は隠している部分もあるとはいえ、互いに素で接することが出来る関係は互いに居心地よく、互いに距離感を縮めていき恋仲となる。あやせ以外に能力者が行方不明になる事件が続き、同級生にもその被害が出たことから学園を更に探ることで秘密を知ることになる。

主人公にだけ素を見せる姿がかわいいのでお気に入りボイスに100くらいの台詞が。罵倒するヒロインとか下手すれば嫌悪感を抱かれる恐れすらありそうだが、全くそんなことはないむしろそれがいい。主人公が謎の薬を注入されて暴走状態手前になるのを抑え込むあたりは、ドラクリの展開に近いなと思ったり。 あやせと琴里の再会をもう少しちゃんと見たかったという思いはあったり(茉優で十分やってるから省かれたのかな)。

 

 

 

サノバでタイムパラドックス、千恋で伝奇物ときて、本作はドラクリに近い異能物としてどう展開させるのかなとヒロインの配し方も含めて色々な期待をして進めた。千恋のようなメインを食いかねない別ヒロインといったものは無く、ドラクリのように脇役が進行によって敵味方が変わるようなことが無い物語への違和感を抱かない作品だった。サノバに対する浮き沈みのパンチの物足りなさというのを多少なりとも感じた側面はあれど、本作で特に好印象だったのが各ヒロインが全員の表情を見ることが出来たところだろう。個人的には主人公がその時どう思ったかよりもヒロイン側の感情の変化の方が気になる性質なので、ゆず作品ではその好みを満たしてくれていたのもこのブランドが好きなところだったりする。繰り返しになるが本作では特にその表情が、どのヒロインも漏れなく描かれていたところに好感が持てた。 全進行で言えることとして、二人のもう少し先の姿(実際に結ばれた姿)というのが見たかったという物足りなさはあった。また、養父が進行中で主人公に的確にいいアシストをしていて終始カッコよかった。