きままにほろり

銀色のシールの貼ったゲームのネタバレ感想ほか、徒然なるままに。

リズと青い鳥

一応、中高を吹奏楽部に身を置いた立場として響け!という作品は古傷をえぐられるというか、悔し嬉しの思い出を強制的に想起させられそうなのが怖くて縁をつくることは無い作品だろうなーというように思っていました。

ところが好きな役者さんが出ているからと興味を惹かれ(いくつも出演されていますけど見ていない作品の方が多いはず)先述の理由から鑑賞は決めかねていたものの、予告編でふたりの少女の世界へ完全に引き込まれてしまっていました。

 

吹奏楽部という環境においてひとつの目標を目指す人々に焦点を当てたものではなく、本作はその環境に集う二人の感情の機微に焦点を当てて、あくまで吹奏楽を効果として上手く用いているのがトラウマ回避としては良かったです(結果としてみぞれに共感しすぎて似たようなことになりましたけど)。

 

以下はネタバレというか気持ち悪くなると思うので注意。

 二人で登校する早朝自主練の時間、みぞれと希美の二人だけの時間から始まる朝。二人だけの朝からどんどん登校していって希美の周りには人が集い、みぞれはそのまま一人きりでというのがとてもリアルでどんどん引き込まれ(やっぱりどこもフルートやオーボエってああいう感じなのかな)。終始、言葉少ななみぞれの感情の動きというのを表情から読み取ることが出来たりで、アニメだからこそここまで細かく出来るのかなーとか考えたり。 そんな感情のすれ違いに二人の感覚のズレがあったりするのかなーとか思ったりして。

そんな一番近くにいてズレた二人が『リズと青い鳥』と重なってどのような物語になるのかなーと予告編から想像していたのですが、帰着点は予想からはズレていたものの見事に腑に落ちるような結末でした。第三楽章のソロパートの微妙な掛け合いの噛み合わなさというのが絶妙で、だからこそ後の演奏に繋がっているというか何というか。最後の演奏は本番とかではなく練習での一場面というのが、これまたリアルだなぁと勝手に思ってしまったり。 希美に対するみぞれの思い(依存も違うし理解されたいも違うし上手い言葉が見つからず)に入り込んでしまった自分としても、希美の抱える思いというのは意外で、みぞれにとっても思いもよらないものだったと思います。

希美の抱える思いに応えるみぞれに自分が共感したせいで、違うとどんどん込み上げてくるものが。サノバにおける寧々の再会のシーンでの彼女の演技に魅了された自分としては(知ってる人で共感してくれる人いたらいいな)、自分の思いを押し込めていたみぞれがどんな声を出すんだろうと思っていました。強く心を揺さぶられるような感じではありませんでしたが、みぞれの思いの吐露というのはきっとこんな感じなんだろうなという感じの弱々しさを感じながらも、しっかりと希美に伝えたいという感じの声でくるものがありました。

 

私にとっても折々で希美みたいな人はいてくれたように思うけど、中高でずっとという関係の人間はいないなと思ったら寂しさが心のどこかに残りました。希美とみぞれの関係性の未来というと、ひだまりの冴英ヒロが似ている部分があるのかなーとも思ったり。 作中のところどころに詰め込まれる所作だったりが要素となって、すべて最後に繋がっているのが完璧だなと思ったり。…そうなるとエンドロールの主題歌が蛇足のように思えてしまうのは、きっと自分の感覚がズレているせいでしょう。

帰宅してパンフレットを読みながらまた見に行きたいという思いと、最初に感じた印象を大切にしたいという思いのせめぎ合いは果たしてどちらが勝つのでしょうか。