きままにほろり

銀色のシールの貼ったゲームのネタバレ感想ほか、徒然なるままに。

金色ラブリッチェ

 ひょんなことをきっかけに庶民が貴族学校で学ぶという『のーぶる☆わーくす』のような始まりとなるこの話、あちらが影武者として潜入したのに対して、本作は庶民のまま転入という形をとります。それゆえ身分の差による差別のような悪い雰囲気から始まっ

たので、これが本編でもしばらく続くとしんどいなーというのが体験版を終えての感想でした(…というのを2か月前に書こうとしてたんですね自分は)。

そんな憂慮を含んで進め始めた本編は、自分は金色奇譚のようなものだと思っていたそれは、まるで一人の少女を描くためだけに用意された物語のようでした。

 

実をいうと初手の情報公開で公開された軽快なOPと過去作から微妙に異なる絵の雰囲気が無ければ、きっとプレイには至っていなかった可能性が高かったと思います。

…というのも前々作の『花咲ワークスプリング!』で各ヒロインの進行は良かったものの、最後のトゥルーエンドにもやもやを感じて慎重になっていたところがあったからです。 ただ今作は思うところはあるものの、げんなりするような最期ではなかったように思います。

 

 

 

異国のお姫様とギャルと女騎士に喫煙ヤンキー、そんなヒロイン勢に共通するのは金髪という特徴。そんな彼女たちの特徴は当初の想像よりも物語の深くに関わっている鍵であり、そんな彼女たちの物語と主人公の物語が絡み合ってそれぞれの進行で謎が明かされる。

 

エロイナ(エル)

シルヴィア王女に常時仕える女騎士は、まさに王女第一で日本留学の際に学年をわざとダブらせて同学年として学校生活を過ごすほどの忠臣ぶり。王女の護衛に全霊を捧げる彼女に対して、王女は彼女の特技であるフェンシングを続けるなど自分を大切にしてほしい様子。 そんな彼女が最後の晴れ舞台にとフェンシングの公式大会を控える最中、パパラッチに狙われる対策として恋人を装うことになった主人公とエル。日々を過ごす中で2人は中を深めていき、エルは政治的理由で家を分けた妹シルヴィへの依存をやめて主人公と共に自分の道を歩むことを決心する。

妹カミナル(銀)と姉シルヴィ(金)の髪の色が違う理由が明かされる進行。他の進行でも都合上触れられる機会はあれど、詳しく理由が語られるのはここ。 エルが央路との関係に覚悟を決めるまでがエル視点であればなーというのが少し物足りなかったところ。途中から出てくるスポーツ記者に怪しさを感じたけど、全く何も無くて拍子抜けした。

 

恋にも運動にもまっすぐなサブヒロインながら一番純粋に恋愛してそうな子。有望な短距離選手であったものの、入学当初の故障で不調となり運動経験のある主人公がコーチとなって、学校に残れるような記録を残せるように奮闘する…という『天色』の夕音みたいな進行。

始めは彼女に告白されるも主人公らしからぬ微妙な反応を見せる主人公だが、彼女の純粋な態度に惹かれ(憧れもあるのかな)好意を寄せるようになるので他とは異質。

 

玲奈

貴族だらけの中での唯一に近い同級生の庶民仲間ということで、気兼ねなく話しやすい関係の主人公と彼女。この進行では主人公がこの学校にくる以前のことについてここで理由がわかる。男女ではあるものの気軽さや玲奈の何でも悩みに乗ってくれる包容力から、恋仲というのは考えないただの友達という関係が似合う二人だったが、ふとした事故をきっかけに男女ということを意識するようになる。 そんな折に前の学校で甲子園を目指した幼馴染みが進路を悩んでいるという噂を聞くが、本人は否定したので前の学校での衝突もあり聞き流す。そうしていると他の旧友から彼を説得するように頼まれ、乗り気でないもの自分の中でもけじめを付ける意味で背中を押す手伝いをする。

友達から恋人になるきっかけが必要だったとはいえ、ハーブに酔ってずるずると関係に至ったから…というのは少し考えもののように思える。主人公に助けを求める部員の出てくる振りが不審者過ぎてこれから何かあると思ったよ。 エピローグが母親で中の人繋がりで『千恋』の芳乃が浮かんだのは、きっと自分くらいだろう(他の作品想起しすぎ問題)。

 

シルヴィア(シルヴィ)

エル進行でもあるように(エロイナを先にやることを勧めるということです)難しい境遇に立っているからかしっかり者といえど、よく即決即断で早とちりをしがちな王女でエルをよく困らせる。主人公との幼少期の交流からお互いに恋心を秘めているものの、勘違いやら邪魔やらで誤解を解くのに苦労する…とはいえお互いの気持ちを確認してしまえばすぐ。同じく昔を知る理亜がキューピッドとなる場面もありながら、シルヴィは前の学校でのわだかまりの残る主人公の思いを解きほぐす。

竜恩寺の子息が恋敵として出てくるも、少しちょっかいをかける寸前…までいくくらいでほとんど相手にはならず(一度は挫けてもまた出てくるのか?と思いきやそんなこともなく)。ドメインヒロインとなるこの進行だけを見ると綺麗なものだが、この後に再びここのエンドに戻ってくると表情が変わる。

 

…and

4人ヒロイン+サブヒロインのように見えたこの作品で他のヒロインの進行を終えた後に出てくる彼女。主人公よりも昔の記憶をよく覚えていて、夕方の屋上で彼に悩みごとがあると的確なアドバイスをくれた彼女。世界的な歌姫として活躍しながら、どこか言葉の節々に引っかかるような意味があった彼女。

央路がそんな理亜の違和感にすぐ気づけるような記憶力のいい主人公だったら、この物語は成立しなかったのかもしれない。そんな主人公はいつかの初恋よりもだんだん理亜に惹かれていき、告白するもそれ動転した彼女は思いもよらぬ行動を起こし、それが原因で入院することになる。

入院したことでようやく気づく理亜に対して抱いていた違和感。彼女は幼少期から脳梗塞でいつ亡くなってもおかしくないような身体であることを本人から告げられる。そして気を塞いでいた当時に隔てなく話してくれた彼に、叶うはずのない恋心を抱いたことを…。

主人公はそんな彼女に明日を見せてやると、晴れて恋人同士になり長年の思いを叶える。シルヴィ主催のパーティで10年前の約束を果たそうと無理をしたことで終えた後、一時生死をさまようこととなる。 そこからは日めくりのように月日は進み、一年後にやっていた葬送の日に央路はシルヴィから理亜に央路のことを託されたことを告げる。

 

日めくりを終えてシルヴィのエピローグを見直すと新たに、理亜に似た女の子との場面が(攻略が教えてくれなかったら自分で見つけられなかったよ!)。多少の齟齬に目をつむれば、シルヴィエンドと理亜エンドの両方の最後と言われても自然になるように描かれている。 それからおまけを開くと夢の結婚式の写真が…って明らかな蛇足な感じがしたんですがまぁシナリオ無かったことにして見ると綺麗なのかなーと思ったり(シルヴィの結婚式でついでに着させてもらったと思えば?)。

それぞれの進行に理亜の伏線が敷かれているような感じがして、進行管理としても理亜だけが特別な雰囲気がして、ぶっちゃけ理亜進行終えると他全キャラがサブヒロインだったのかな?っていう。

途中でカミナルと絢華ともお近づきになれる場面もあったものの、絢華は単独で軽く進行があっても良かったのに(てっきりあると思ってた)というのが心残り。